令和4年9月14日 第3回江東区議会定例会
◯29番(徳永雅博議員) 江東区議会民政クラブの徳永雅博です。会派を代表して、大綱4点について質問をさせていただきます。区長をはじめ関係理事者の明快な答弁を求めます。
さて、質問に入る前に、このたびの同僚議員によるあっせん収賄容疑事件の発生は、誠に遺憾で重大な出来事であり、会派としても一刻も早く真相を解明して、今後こうしたことが起こらないように、再発防止の対策と政治倫理の確立に全力で取り組みたいと考えております。どうぞよろしくお願い申し上げます。
それでは、質問させていただきます。
まず初めに、地域コミュニティと長期計画の展開についてお伺いします。
いまだ収束が見えないコロナ禍で、最大の問題は地域コミュニティの活動がほぼ完全に止まったことと言われています。お祭りや様々な催物の行事は一昨年から中止の連続で、町会・自治会の総会も書面開催、地域活動の中心的な学校関係から各種団体まで、対面でのコミュニケーションが取れないことは、区民一人一人の心の奥底にストレスという大きな空洞ができているのではないかと心配されます。
新型コロナウイルスの感染拡大は、独り暮らしの高齢者や子育て世代の親御さん、元気なこどもたちが気楽にふらりと寄れる場所を塞ぎ、何気ない日常生活の楽しみや喜びの様々な機会を無残にも奪ってしまったのです。
そこで、まず初めに、令和2年に策定された当初の長期計画の展開の中で、地域コミュニティの発展を促す施策としては代表的にはどのようなものがあり、また、その中で逆にコロナ禍でできなかった施策の内容はどのようなものがあったのか、そしてまた、そのことによって行財政運営上、具体的にどのような変化や課題をもたらしたのか、見解をお伺いします。
次に、具体的に重点プログラムの中でお聞きします。
重点プロジェクト1、水彩・環境都市づくりの中で、公共緑化の工事が全面的にカットされました。CIGの実現を目指している本区として、地域コミュニティ醸成の中で緑や花の持つ癒やしや生理心理的効果は重要な要因であります。
また、重点プロジェクト3、地域の活力を生み出すまちづくりでは、長期間にわたって、感染防止対策で文化センターや図書館などが閉館され、また、ワクチン接種会場として利用されるなど、本来の目的であるにぎわいと活気にあふれた地域コミュニティの発展には、程遠い環境が今も続いています。
また、本来実施すべき公共施設の施設整備や改修計画も何件か先送りになりました。それでも区民は不平不満を言うことなく、コロナ禍の状況を理解してじっと耐えています。その背景には、コロナ発生当初の中期的な財政計画では、4年間で160億円ほどの減収が見込まれるという試算があり、出来上がったばかりの長計を見直したことに対して区民が受け入れたことです。しかし、実際の税収は下がることなく、直近の都区財調の調整算定結果を見ても、本区では61億の増収が見込まれています。
そこでお伺いしますが、来年度予算編成の時期に合わせて、改めて長計の見直しを行い、既に掲示されていたプロジェクトだけでなく、ポストコロナの時代を見据えた新規の事業も含めて長計を新たに見直すべきと考えますが、見解をお伺いします。
次に、行政評価の実効性についてお伺いします。
ここ2年半に及ぶコロナ禍での政策評価は難しいものがあると思います。令和4年度の外部評価結果報告書を見ましても、施策4のスポーツを楽しむ環境の充実では、新型コロナ感染症の拡大防止に伴う施設利用休止などで明らかに目標値を下回り、施策13の生涯にわたり学習できる環境の充実でも、目標値を達成できる環境にはなかったと思われます。
報告書全般にわたり、コロナ禍という極めてまれな状況下で評価の難しさがのぞかれますが、その中でも外部評価委員、あるいは外部評価モニターからは、もう少しより適切な指標を検討していただきたいとの指摘もあります。
また、今後、行政評価を実効性あるものにしていくためには、事業の検証・見直し、予算編成、事業の実施を一つのサイクルとして、時代の変化に対応した区政運営の実現が重要であり、誰に対して具体的に何をなすべきか、何を最終的な成果にしていくのか、基本となる考え方を、施策を推進する組織・職員間で共有することが重要と言われています。
そこで提案ですが、協働型プログラム評価の導入です。この政策評価の手法は、協働パートナーとともに成果目標(アウトカム)を定め、ロジックや数字を基にして優れた施策を創出し、成果を明らかにすることです。
具体的には、行政職員及び協働相手の区民、事業者、NPOなどが参加するワークショップを通して達成すべき目的(アウトカム)を決定し、ロジックモデルの作成を行い、ロジックモデルに位置づけられたアウトカムをどのような指標で測定するのか検討して、全ての当事者がプログラムへの関心を高め、実施や評価に対する積極的な関与を引き出すことです。この評価指標は特に地域福祉計画の評価に有効とも言われています。
そこでお伺いしますが、現在の外部評価を活用した行政評価制度の評価と課題、併せて協働型プログラム評価の導入の考え方について、見解をお伺いします。
大綱2点目、地域福祉計画の実効性についてお伺いします。
本年3月、本区としては初めての地域福祉計画が策定されました。改めて地域福祉計画の歴史を振り返りますと、2000年に社会福祉事業法から社会福祉法に改正され、地域福祉の推進が同法第4条に明確に規定され、これからの社会福祉は、地域住民を含めた様々な福祉関係者の協働によって、地域での自立生活を推進していくという方針がうたわれました。
また、2002年1月に公表された地域福祉計画策定指針では、「地域福祉とは地域住民の主体的な参加を前提としたものであり、地域福祉計画の最大の特徴は地域住民の参加がなければ策定できない」とも言われています。
また、社会福祉法第107条1項において、市町村は、地域福祉の推進に関する事項として、1、地域における高齢者の福祉、障害者の福祉、児童の福祉その他の福祉に関し、共通して取り組むべき事項、2、地域における福祉サービスの適切な利用の推進に関する事項、3、地域における社会福祉を目的とする事業の健全な発展に関する事項、4、地域福祉に関する活動への住民の参加の促進に関する事項、それに2017年の改正では、地域福祉計画を実効あるものにするためには、包括的な支援体制の環境整備が必要であると述べられています。この包括的な支援体制の構築こそ地域福祉計画の最大のテーマと言えます。
そこで、本区の地域福祉計画でも、「一人ひとりの尊厳が守られ、地域でともに支え合い、誰もが笑顔で安全に暮らせるまち」の基本理念の下に、地域、行政、地域と行政の3つのつながりづくりを進め、公的な支援と地域の支え合いによる支援が重層的に機能する包括的な支援体制を構築することを目指していますが、具体的な工程表や内容についてどのような戦略を現時点で考えているのか、お伺いします。
次に、地域福祉計画を具現化するために最も重要な組織が江東区社会福祉協議会になります。行政の地域福祉計画と社協の地域福祉活動計画は車の両輪と言われ、社協の地域福祉コーディネーターによる社会資源の発掘や、高齢者の見守り事業や権利擁護事業など、具体的な取組が地域福祉計画を成功させる大きな要因となっています。
そこで、現在、社協による地域福祉活動計画の素案を策定中と伺っていますが、その基本的方針と事業計画について、どのような検討がなされているのか、また、障害者福祉センターが指定管理者に運営委託された後の社協の組織体制をどのように考えているのか、あわせて、地域福祉計画をより具体化するためには社協の組織の強化及び中間支援組織の構築が早急に必要と考えますが、その戦略について、見解をお伺いします。
次に、社会的養育ビジョンについてお伺いします。
現在本区は、令和7年度以降の予定で、児童相談所の設立に向けての準備を進めています。令和4年度は、江東区児童相談所移管推進会議において、年度内に基本構想をまとめ、来年度以降は基本計画づくりに体制を進化させる計画であると伺っています。
議論の論点として、児相の設置意義や在り方、子ども家庭支援センターなど各機関との連携、人材育成などの多岐にわたると思われますが、中でも私が注目するのは、社会的養護の体制整備に関する基本的な考え方です。
平成28年の児童福祉法等の一部を改正する法律において、こどもが権利の主体であることが位置づけられ、こどもの家庭養育優先原則が明記されました。その後、平成29年8月に、児童福祉法の抜本的改正を受けて新しい社会的養育ビジョンがまとめられ、乳児院や児童養護施設の高機能化及び多機能化・機能転換、小規模かつ地域分散型の方向性が提示されました。一方で、里親や特別養子縁組を含む在宅家庭への支援強化もうたわれています。
そこで、本区は、児相設置を検討するに当たり、受入施設がない中、社会的養護の環境づくりを抜本的に構築する必要があると思われますが、新しい社会的養育ビジョンの認識と、その実現に向けての課題について、見解をお伺いします。
大綱3点目、コロナ禍における中小企業・小規模事業者支援についてお伺いします。
まず初めに、今年の3月に発表された江東区産業実態調査結果報告書から見える課題と方策についてです。コロナ禍で報告書のまとめを1年延ばした経緯もあり、今回の産業実態調査は、通常の経済環境とまた違った様相の中で、事業者の様々な御苦労の内容が拝見されますが、報告書の最後に、1、企業を主たる取引先とする企業、2、一般消費者を主たる取引先とする企業、3、商店会と、3つのカテゴリーに分けて、経営状況や立地環境、雇用や資金調達などの様々な角度から現状分析をしています。
そこで、まず初めに、そこから見える本区の現在の中小企業・小規模事業者対策で不足している事業や、今後新たに構築すべき事業をどのように認識しているのか、お伺いします。
次に、コロナ禍・ウクライナ危機における経営改善策についてお伺いします。
報告書の中にも、新型コロナウイルスの影響で、小規模事業者や製造業、卸売業等は、売上高や景況感の悪化が伝えられています。また、ロシアのウクライナ侵略により、供給網の停滞などから、原材料費が高止まり、秋には食品をはじめ、多くの商品でさらなる値上げが見込まれています。
また、東商江東支部の調査でも、建設業からは、「積算時と実際の工事着工時に原材料価格の乖離が生じることがあり、赤字工事になるケースがある」といった声も聞かれます。
長期化するコロナ禍で、本区として、経営体力の弱い中小企業・小規模事業者の現状、原材料のコスト上昇の実態や受注減、来客者減に伴う売上減少、資金繰りの悪化や人材不足の問題などを再認識して、経営改善をどのように後押しできるのか、改めて抜本的な施策を考えるときだと考えますが、見解をお伺いします。
あわせて、抜本的改革を考える上で、中小企業活性化センターやインキュベーションセンターなどの創設など、本区の新たな中小企業・小規模事業者の応援体制を構築すべきと考えますが、見解をお伺いします。
次に、地域社会と中小企業・小規模事業者の共生についてお伺いします。
本区が策定した地域福祉計画の中で、包括的な支援体制の構築に向けて、施策の一つとして、地域のつながりをつくるという方針が掲げられています。区民に最も身近な地域のつながりの再生に向けて、気軽に集える場の創設、地域ネットワークの構築、区民や団体が様々な課題に主体的に関わる体制の充実をうたっています。
その中に重要なファクターとして、地域で共存共栄している中小企業・小規模事業者の存在があります。例えば、高齢者の孤食や孤独死の社会的問題を取り上げた場合、特に地域の小規模事業者との連携は重要になってきます。
一般的に多様な地域的課題や社会的課題が山積している中で、これらの課題解決の担いとしてソーシャルビジネス(社会的企業)が注目されていますが、地域共生社会の新たな社会資源としての地域に根差した中小企業・小規模事業者と地域との共生の概念は、もっと掘り下げて研究すべき課題です。
中小企業庁も、2014年版中小企業白書において、CRSV(Creating and Realizing Shared Value)という新しい造語を使い、中小企業・小規模事業者は、日常の事業活動で構築した顔の見える信頼関係を積極的に活用しながら、地域課題解決に自らの事業として取り組み、持続的な事業活動をしていくことが重要であると指摘しています。
そこで、本区としては、地域社会と中小企業・小規模事業者との共生をどのように認識し、具体的に取り組んでいるか、見解をお伺いします。
次に、大綱の4点目、生涯学習・社会教育の重要性について、お伺いします。
本年8月に中央教育審議会生涯学習分科会において、第11期の分科会の議論の整理が行われました。ここではその内容との比較の中で、本区の取組についてお伺いします。
まず、言葉の整理から入りますと、生涯学習とは、一般には人々が生涯に行うあらゆる学習、すなわち学校教育、家庭教育、社会教育、文化活動、スポーツ活動、レクリエーション活動、ボランティア活動、企業内教育、趣味など、様々な場や機会において行う学習を意味すると言われ、その理念としては、教育基本法第3条に、「国民一人一人が、自己の人格を磨き、豊かな人生を送ることができるよう、その生涯にわたって、あらゆる機会に、あらゆる場所において学習することができ、その成果を適切に生かすことができる社会の実現が図られなければならない」と規定されています。
また、社会教育とは、学校の教育課程として行われる教育活動を除き、主として青少年及び成人に対して行われる組織的な教育活動を意味し、その対象者は、幼児から高齢者までと多様であることにも配慮が必要であると言われています。
このように、生涯学習の範囲は非常に広く、具体的な内容については千差万別でありますが、人生100年時代、Society5.0の到来、DX(デジタルトランスフォーメーション)の急速な進展の中で、社会の構造的な変容に対応するためには、学び直しをはじめとする生涯学習の必要性が増大していることが、分科会の議論で主張されています。
そこで、本区は、生涯学習・社会教育の重要性をどのように認識して、具体的にどのような取組を行っているか、併せて施策の評価と今後の課題についてお伺いいたします。
次に、ウェルビーイングの実現についてお伺いします。
ウェルビーイングとは、一般的に、1、身体的、2、精神的・心理的、3、社会的に、全てが満たされた状態と言われます。最後の社会的とは、つながりや人間関係のことを指します。生涯学習を通じてウェルビーイングの実現を図るに当たっては、学校教育以外での学びの機会の充実が必要不可欠であり、自己実現を図る上での広い意味でのリカレント教育、また、個々のニーズに応じて受けられる教育機会の充実を図るべきと言われていますが、本区のウェルビーイングの実現への考え方とリカレント教育の取組についてお伺いします。
最後に、地域コミュニティの基盤としての役割についてお伺いします。
ウェルビーイングの実現のためには、個人の成長だけではなく、それを支える基盤づくりと継続性が重要になると言われています。例えば、福祉、防災など、地域コミュニティに着目した施策の展開が、地域住民の学びの連続性となり、ひいては地域コミュニティの基盤形成にもつながります。
また、コミュニティスクールや地域学校協働活動に参画することで、社会に開かれた教育課程の実現を図るなど、学校を核とした地域づくりにもつながっていきます。
そこで、本区としては、生涯学習の取組の中で、地域コミュニティの基盤づくりに貢献している取組にどのようなものがあるのか、あわせて、本区独自の生涯学習推進計画を策定すべきと考えますが、見解をお伺いして、質問を終わります。
御静聴ありがとうございました。(拍手)
(山崎孝明区長登壇)