朝鮮戦争休戦から70年
7月27日は、1953年の休戦協定から70年目を迎えた。3年余にわたる朝鮮半島のほぼ全域で戦われた大規模な国際紛争であった。韓国ではこれを「6・25動乱」と呼び、北朝鮮では「祖国解放戦争」と名付けている。
その原因として、第2次世界大戦直後から表面化した米ソの「冷戦」構造が、朝鮮が南北に分裂し反目し合う破目になったと言われている。北朝鮮はこの日を「戦勝記念日」と位置づけている。
この戦争の被害は、正確な数字は不明だが、数百万人の死亡、別れ別れになった離散家族は1千万人とも言われている。
その後も国際紛争は、ベトナム戦争、イラン・イラク戦争など、局地での紛争はあとを絶たず、多くの普通に暮らしている人々の人生を無残にも破壊し、数多くの犠牲者を出している。
戦争ほど残酷なものはない。戦争ほど悲惨なものはないと解っていても、現実にいまも戦争を起こしているロシアのウクライナ侵攻からもわかるように、人類は、悲惨な過去の歴史を学ぶことなく、過ちを繰り返している事実が現存することに極めて脅威を感じる。
一度始めた戦争を止めるのはなかなか難しい。朝鮮戦争でも休戦協定が成立するまで、交戦双方による休戦会談が始めってから約2年間かかっている。北朝鮮は27日に軍事パレードを行い、金正恩は、朝鮮戦争で支援を受けた中露との結束を再現し、米国へのけん制を図っている。
第2次世界大戦が終結して、国際連合を中心に新たな国際秩序を構築しようとして、人類は幾度となく知恵を出し合ってきたが、結果として戦争の残酷さと本気で捉えてきたのかと極めて疑問に思えてならない。
平和的な国際秩序の構築に残された時間はあまりないと思われる。そこで問われるのは極東アジアの安全保障の鍵を握る日本の立場である。日本の安全保障の考え方がとても大事である。しかし28日に発表した2023年防衛白書の内容を見る限り、北朝鮮による相次ぐ弾道ミサイル発射や覇権主義的な動きを強める中国、ロシアによるウクライナ侵略の長期化など、安全保障環境の厳しさを述べる記述が目立ち、防衛力強化のための戦略が見え隠れすることがとても心配である。
人間主義の政治とはなにか。人間主義の国際秩序の在り方とはなにか。根本から問い直す時が来ていると思われる。