2016.05.30
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伊勢志摩サミットの意義


5月27日伊勢志摩サミットが閉幕した。8年ぶりの議長国となる日本は、このサミットで何をアピールしたかったのか。世界経済の安定と成長を最重点課題にした安倍総理の目的は達成できたのだろうか。
報道各社の論評を見ると、各国の首脳には、消費増税の延期を模索する安倍政権の思惑が見え隠れしたと厳しい評価である。安倍首相が主張した財政出動も、経済成長や雇用創出への「財政戦略の機動的な実施」という表現でまとめられ、財政出動に慎重なドイツや英国に配慮した文言になっている。
実際、国際通貨基金(IMF)の4月時点での経済見通しによると、日本の2016年の実質経済成長率は0.5%と、米国2.4%、英国1.4%、ユーロ圏1.5%に比べ格段に低くなっている。
つまり日本が世界経済の安定や成長を訴える前に、自国の成長戦略をいかに実現していくかが大きな課題なのである。その意味で世界の首脳も、アベノミクスについて極めて懐疑的になっているのではないかと思われる。安倍首相は、現在の世界経済の置かれている状況が、わざわざリーマンショックの時と似ているような資料持ち出して説明したようであるが、まさしく消費増税延期の演出である。そして結果として、サミット後すでに2年半の延期の指示を出している。
そして、衆参ダブル選挙のシナリオを急いでいるようである。あまりにもお粗末な戦略であり、日本の政治がいかに貧弱になったかを世界に露呈しているようで情けない。
一方で、戦後初めての現職アメリカ大統領訪問でアベノミクスの失敗をごまかそうとしているように見えてくる。オバマ大統領の演説は、核廃絶に向けて自身の信念を見事に語り、素晴らしいロジックで展開していたと思われる。よく謝罪の言葉がほしいような言論も見られるが、未来志向で世界の平和を広島から訴えたことは、アメリカの政治戦略の懐の深さを感じた。
しかし他方、日本の総理としての存在と言論が全く持って世界に注目されないところに、日本の政治戦略の貧弱さが目立っていた。オバマ大統領の広島訪問は歴史に残る一ページだが、世界で唯一の被爆国としてのもっと強いメッセージが欲しかった。
いづれにしても、ロシヤと中国がいないサミットが、今後世界経済の動向に対してどこまで影響力を誇示できるか大きな課題である。現にG7の間でも、ロシアとの付き合い方で、日米とヨーロッパ諸国との立場は隔たりがある。そこに調整役としてもっと日本が介入すべきだが、財政出動ばかり主張する日本には説得力がない。
残念ながら今回のサミットは、世界経済の低成長に陥るリスクに、主要7カ国(G7)が共同で対処する姿勢を明記できたことはよかったが、具体的な成長促進策は各国に任され、G7の政策協調の実効性が見えないところに問題を残したといえる。
考えたくないが、サミットを政治利用する国があるとすれば、サミットの今後の存在価値を再評価する必要があると思われる。