平成30年6月13日 第2回江東区議会定例会
民政クラブの徳永雅博です。会派を代表して、大綱3点について質問をさせていただきます。区長並びに関係理事者の明快な答弁を期待いたします。
大綱の1点目は、次期長期計画策定に当たっての視点についてです。
本区は、平成30年度、31年度の2年間をかけて、平成32年から10年間の次期長期計画の策定に取りかかろうとしています。
その視点として、1、社会・経済情勢の変化に対応した戦略的な計画、2、行政マネジメントと連携した計画、3、区民とともにつくる計画、4、分かりやすい計画と、4つの視点を掲げています。
区民会議や地元大学との連携など、多様な世代、主体の参加は、計画をつくる上で極めて重要であり、また、新たな行財政改革計画や評価システムの構築は必須の課題でありますが、その中で特に、社会・経済情勢の変化に対応した戦略的な計画について、果たして10年間の政策経営戦略でいいのか、もう少し長期の自治体経営を見越した戦略がこの際必要ではないかという視点から、何点かお伺いいたします。
まず初めに、最近よく使われる人生100年時代の考え方についてです。
長い老後をどのように過ごすか、生きがいのある人生とはどういうものか。従来の人生観や人生設計が大きく変化して、希望に応じて活躍できるエイジレス社会をどのように構築していくかが、今、問われています。
既に平成29年9月からスタートした人生100年時代構想会議では、誰もがより長いスパンで人生を再設計できる社会を構想した、政府全体のグランドデザインを考えています。
また、5年に1度見直す政府の2018年の高齢社会対策大綱では、より具体的に、65歳を一律に高齢者と定義している現状を改め、公的年金や就労に関する制度を、個々の意欲や健康状態に基づいて柔軟なものに変え、元気な高齢者が支えられる側から支える側に回ることで、支える側の現役世代とのアンバランスを解消することをうたっています。
70歳以降の年金の繰り下げ受給を可能にすること、高齢者向けの仕事に関する情報提供や就労支援を充実させるため、各地のハローワークに生涯現役支援窓口を設置するなど、高齢者の働く意欲を高めることに重点が置かれております。
その一方で、社会保障制度の持続可能性の追求ばかりが前面に出て、住みなれた地域社会で、地域包括ケアシステムが目指す、生きがいと生活に充実感を持って暮らしていける地域社会を本当に実現できるのか、不安もあります。
そこで、まず初めに、本区は、昨今話題に上がっているこの人生100年時代の自治体経営の考え方について、どのような認識と戦略を考えているか、お伺いいたします。
次に、長期的な視点の問題提起として注目されている、総務省が立ち上げた、自治体戦略2040構想研究会についてお伺いいたします。
この研究会の目的は、高齢者人口がピークを迎える2040年ごろをターゲットに、医療、福祉、インフラ、空間管理など、住民生活に不可欠な行政サービスがどのような課題を抱えていくことになるか、その上で、住民の暮らしや地域経済を守るために、地方自治体が持続可能な形でどのような多様性の住民サービスを提供できるのかを検討することにあります。
特に、この研究会の特徴は、過去からの延長線上で対応策を議論するのではなく、将来の危機とその危機を克服する姿を想定した上で、現時点から取り組むべき課題を整理するバックキャスティングの取り組みを行っているところです。
本年4月、議論の成果が第一次報告として提出されました。そこには、2040年ごろに迫り来る我が国の内政上の危機と、その対応として3つの柱が掲げられています。
1つが、若者を吸収しながら老いていく東京圏と支え手を失う地方圏です。
具体的な危機の内容として、例えば、東京圏では地域のつながりが薄く、さらに65歳以上のひとり暮らし高齢者の増加も見込まれ、地域や家族がセーフティーネットとして機能しにくい状況が掲げられ、その対応として、多元的に、元気な高齢者が支援を必要とする高齢者の支え手に回る仕組みの構築、バイタル情報の収集やAIによる診断など、技術革新の成果を積極的に導入し、支え手不足を緩和するなどが考えられています。
また、2つ目の柱の、標準的な人生設計の消滅による雇用・教育の機能不全の項目では、例えば、就職氷河期世代で無職や低賃金で経済的に自立できない人々がそのまま高齢化すれば、社会全体にとってのリスクになりかねない状況の危機に対して、対応として、その人たちのために柔軟な働き方を前提とした就労の場が得られるような受け皿づくりの必要性を訴えています。
また、3つ目の柱として、スポンジ化する都市と朽ち果てるインフラが掲げられています。
この報告書の最後には、「短期間の財政効果を追求した取り組みでは、地域社会の持続可能性に対する根本的な疑問と不安に応えられない。各行政分野における取り組みとあわせて、自治体行政の根本を見直す必要がある」と指摘しています。
迫り来る危機に対して、本区としても早期に対応することが、何よりも、持続可能な自治体の経営戦略と考えられますが、本区はこの第一次報告書をどのように理解し、評価しているか。あわせて、提案として、本区独自の自治体戦略2040の構想研究会なるものを、長期計画策定作業と同時に立ち上げてみてはどうかと思われますが、見解をお伺いします。
次に、平成28年に提出された第31次地方制度調査会の人口減少社会に的確に対応する地方行政体制及びガバナンスのあり方に関する答申について、本区の見解をお伺いします。
そこには基本的な考え方として、地方公共団体は、人口減少社会において、合意形成が困難な課題について解決することが期待され、また、住民の福祉の増進に努め、最小の経費で最大の効果を上げるよう、地方公共団体の事務の適正性の確保の要請が高まると言われています。本区はこの答申をどのように受けとめ、評価しているか、お伺いします。
あわせて、その中には、本区の規模としては努力義務になりますが、内部統制体制を整備及び運用する権限と責任があることを明確化すべきと掲げていますが、本区は内部統制制度の構築をどのように考えているか、お伺いします。
また、次期長期計画の策定に伴い、本区のアウトソーシング基本方針を見直す計画があるか、お伺いをいたします。
次に、大綱の2点目、地域共生社会の実現についてお伺いします。
政府は、平成28年6月2日閣議決定のニッポン一億総活躍プランの中で、地域共生社会の実現を提起しています。その具体的なイメージは、こども、高齢者、障害者など、全ての人々が地域、暮らし、生きがいをともにつくり、高め合うことができる社会として、そのため、支え手と受け手側に分かれるのではなく、地域のあらゆる住民が役割を持ち、支え合いながら、自分らしく活躍できる地域コミュニティを育成し、福祉などの地域の公的サービスと協働して助け合いながら暮らすことのできる仕組みを構築する。また、寄附文化を醸成し、NPOとの連携や民間資金の活用を図るとうたっています。
その後、地域共生社会の実現に向けた地域づくりに関する取り組みの議論として、平成28年7月に「我が事・丸ごと」地域共生社会実現本部を設置、同10月には、地域における住民主体の課題解決力強化・相談支援体制の在り方に関する検討会、略して地域力強化検討会が設置され、平成29年2月には、「地域共生社会」の実現に向けて(当面の改革工程)が報告され、同9月には、地域力強化検討会の最終とりまとめが発表されています。そこには、さまざまな具体的な考え方や取り組みが掲げられています。
そこで、地域力強化検討会最終とりまとめで、地域共生社会に向けて目指す方向として示された5つの視点から、地域共生社会の実現への方向性を考えてみたいと思います。
第1に、個人の尊厳が尊重され、多様性を認め合うことができる地域社会をつくり出すこと。社会的孤立や社会的排除をなくし、誰もが役割を持ち、お互いに支え合っていくことができる共生文化を創出することに挑戦すること。
第2に、地域住民、民間事業者、社会福祉法人、民生委員、児童委員、行政等といった、多様な構成員が参加、協働する場をつくること。
第3に、これまでの申請主義による待ちの姿勢ではなく、抱えている問題が深刻化し解決が困難になる前に、早期に発見して支援につなげていく重層的なセーフティーネットを構築すること。
第4に、分野別、年齢別に縦割りだった支援を、当事者中心の丸ごとの支援とし、個人やその世帯の地域生活課題を把握し、解決していくことができる包括的な支援体制をつくること。
第5に、福祉以外の分野との協働を通じて、支え手、受け手が固定化されない参加の場、働く場の創造を図ることが指摘されています。
しかし、残念ながら、本区の第7期の江東区高齢者地域包括ケア計画の中では、地域共生社会の実現に向けた取り組みの方向性については、今後検討を進めていきますという、全く具体性のない状況になっています。
そこで、まず初めに、本区の地域共生社会実現に向けての取り組みはどうなっているのか、現状の課題と今後の展開についてお伺いします。
その中で、理想的な地域共生社会を構築するには、足元の地域コミュニティの再生が最も重要な課題になります。
例えば、ことしの4月16日に視察しました、地域認知症ケアコミュニティ推進事業の先進自治体として有名な福岡県大牟田市では、住民に身近な地域での取り組みとして、各小学校区の単位で校区社会福祉協議会を設置しています。そこを基点に、多くの地域団体の参加と協力を得ながら、地域の保健福祉問題に取り組み、その中で認知症高齢者の見守り事業を展開しています。
そこで本区は、高齢化と後継者不足で地域運営組織が弱体化する中で、コミュニティの再生をどのように考えているか、現状の課題と今後の展開についてお伺いします。
また、提案として、地域コミュニティが進むべき将来ビジョンを策定すべきと考えられますが、見解をお伺いします。
また、地域コミュニティを支えるには、多種多様な人材が必要となってきます。地域住民の中には、企業や行政で仕事をした経験がある人、自営業としてビジネスに携わった人、福祉や教育の現場で勤務してきた人など、さまざまな人材がいると思われます。そうした人材に、地域コミュニティの中核として支える人材に育っていただくためにも、地域共生社会実現のための新たな人材養成プログラムを計画すべきと考えますが、現状の認識と今後の展開についてお伺いします。
そして、そのことを後押しする一つの施策が、本区が平成23年度から取り組んでいる江東区協働推進中間支援組織(仮称)市民活動推進センターの整備と思われます。
平成25年度には、(仮称)市民活動推進センターの運営主体として、江東区社会福祉協議会が適切であるという意見がまとめられたと伺っていますが、中間支援組織のソフト・ハード両面から、現在の支援体制、ハード整備の進捗状況はどうなっているか、お伺いします。
次に、本区の地域福祉計画策定の考え方について、改めてお伺いします。
これまで一般質問や予算委員会等で、本区も早期に地域福祉計画を策定すべきと提案してきましたが、縦割りの行政計画が既にあること、社会福祉協議会の地域福祉活動計画をもって代替するという理由で、一向に計画策定の兆しは見られませんでした。
しかし、平成29年6月2日公布の地域包括ケアシステムの強化のための介護保険法等の一部を改正する法律の中では、社会福祉法107条に規定される地域福祉計画が、福祉の各分野における共通事項を定め、上位計画として位置づけられ、努力義務として国からも強い策定要望が来ています。
先般視察した熊本市や佐賀市では、既に第3次の見直しがなされ、地域共生社会の実現に向けて、社会福祉協議会の地域福祉活動計画と一緒になって計画を策定しています。
そこで、平成30年度という本区の社会福祉協議会の第4次の地域福祉活動計画を策定する作業に取りかかるときに、本区の地域福祉計画も同時に策定されてみてはどうか、改めて提案しますが、見解をお伺いします。
次に、大綱の3点目、教育政策の諸課題についてお伺いします。
まず初めに、教員の働き方改革についてお伺いします。
平成29年12月22日に中央教育審議会から発表された、新しい時代の教育に向けた持続可能な学校指導・運営体制の構築のための学校における働き方改革に関する総合的な方策について(中間報告)によって、全国的に教員の学校における働き方改革が検討されています。
文部科学省は、実施する内容を緊急対策として取りまとめ、業務の役割分担、適正化を着実に実行するための方策など、5つの視点を提示して、その後の学校における働き方改革特別部会の今後議論すべき論点整理では、1、校長、副校長、教頭も含めた全ての教職員の校務運営上の負担を軽減していくための学校組織運営体制のあり方について、2、学校の教職員が心身の健康を損なわないように働くために必要な学校の労働安全衛生管理のあり方、3、教師の長時間勤務を是正していくための、時間外勤務抑制に向けた制度的処置のあり方について、と3つの論点が整理され、各地方自治体はそれぞれ独自の働き方改革案を議論しています。
そこで、区教委として、現在どのような体制で、どんな検討課題が議論されているのか、また、現在の進捗状況と今後の進行計画をどのように考えているか、お伺いします。
次に、業務の適正化の中に含まれている部活動のあり方についてお伺いします。
平成28年度の勤務実態調査速報値では、小中学校の教師について、10年前と比較しても全ての職種において勤務時間が増加していますが、その要因の一つに部活動の問題が挙げられています。特に中学校において、土日に教師が部活動に従事する時間が倍増していることが指摘されています。
そこで、スポーツ庁は平成30年3月、運動部活動の在り方に関する総合的なガイドラインを発表し、これを受け、東京都教育委員会も4月26日に、中学校版、運動部活動の在り方に関する方針を発表しています。
注目すべきは、従来から課題として上がっていた東京都中学校体育大会実施要項における規定の中で、監督・引率規定に出場校の校長、教員に加え、部活動指導員が追加されたことです。
そこで、本区教委として、現在設置されている部活動等の振興を図る検討委員会の議論の中で、部活動指導員をどのように受け入れ、外部指導員との関係や予算のあり方、そして部活動全体の教員の勤務環境の改善をどのように展開していこうと考えているのか、お伺いいたします。
次に、がん教育についてお伺いします。
先月の5月10日、第二亀戸中学校で、東京女子医大のがんセンター長、林和彦教授の、がん教育に関する視点からの人権尊重についての講演を拝聴しました。
講演は、まず、男性は3人に2人、女性は2人に1人が、生涯がんにかかるとされているデータを示し、がんが身近な病気であることを説明され、林教授自身、中学3年生のとき、大好きだった父親を胃がんで亡くしたことを明らかにし、当時父親ががんと言われたときには末期で、一緒に大事な時間を過ごせないまま亡くなって悔しかった、その悔しさから、がんの専門医になったことを述べられていました。
その後、がん細胞の話や、第1条にたばこを吸わないことを掲げている、がんを防ぐための新12カ条の紹介、また、今はがん患者の60%以上が治り、早期発見・早期治療すればほとんど治ると語り、検診の大切さを訴えていました。
実際に講演を聞いた中学生が、家に帰って親に検診を進めたことによってがんを治療することができ、一命を取りとめた話も披露していました。
後半は、生徒らの事前アンケートで聞いた、大切な人ががんになったらどうするかという質問の回答を紹介しながら、がん患者を守るためには家族の力がいかに大きいかを強調していました。全校生徒267名は、全員真剣なまなざしで林教授の話を聞いていました。
今年度から、学習指導要領の中の保健分野の健康の保持増進、生活習慣病予防の項目に、「がんについても取り扱うものとする」と一文が加わりました。この一文を追加するのに、みずからも教員免許を取得して、四、五年かかったとおっしゃっていました。
平成18年のがん対策基本法が成立してから12年、昨年の10月には、第3期がん対策推進基本計画が策定されています。そこには、がん予防、がん医療の充実、がんとの共生が3つの柱として掲げられています。
また、国は平成26年度よりがんの教育総合支援事業を行い、がんの教材や外部講師の活用に関するガイドラインを作成し、がん教育を推進しています。
既に豊島区では区独自の教材を開発し、平成24年4月、区内全ての公立小中学校でがんに関する教育を始めたと言われています。
がん教育の果たす役割は対象や年代によって異なりますが、疾患の予防、早期発見のために大切な生活習慣、行動習慣を身につけるためには、学齢期のこどもへの教育がより重要な位置づけを担うと言われています。
そこで本区としても、今年度、江東区がん対策推進計画を策定するときに、区教委として、がん教育の取り組みと今後の展開についてどのように考えているか、お伺いします。
最後に、学校施設のあり方についてお伺いします。
本区は、学校施設を建設するに当たり、いまだ福祉関連施設や社会教育施設等との複合型の施設建設は行っていません。しかし、複合化に取り組む地方公共団体は近年増加しています。それは、学校がコミュニティの拠点機能を有し、また高齢者施設の併設では、こどもたちの優しさや思いやりのある心の醸成に役立っているとの効果が報告されているからです。
既に文部科学省においても、平成28年3月に学校施設整備指針の改定を行っており、児童・生徒と幼児や高齢者などの多様な世代の交流について記載しています。区教委の複合施設を含めた今後の学校施設のあり方について見解をお伺いし、質問を終わります。
御清聴ありがとうございました。