令和元年9月19日 第3回江東区議会定例会
◯29番(徳永雅博議員) 民政クラブの徳永雅博です。
冒頭、先週9日に上陸しました台風15号により被災された千葉県民を初め、多くの被災者の皆様に心からお見舞いを申し上げますとともに、一日も早い復旧・復興を心からお祈り申し上げます。
さて、それでは会派を代表して大綱4点について質問させていただきます。区長並びに関係理事者の明快な答弁を期待いたします。
先月の8月27日、私たちの老後の生活を支える公的年金が、将来にわたって安定した運営が続けられるかどうかを確認する5年に一度の財政検証の結果が公表されました。
そこでのポイントは、新しい将来推計人口と幅広い経済前提の設定に基づき試算した結果、経済成長と労働参加がどの程度進むかによって、所得代替率が50%を切る可能性もあることが判明したことであります。
政府は、毎年、骨太方針の中で、成長戦略の実行計画を立ち上げながら、経済再生と財政健全化の好循環を目標としていますが、もし実質経済成長率がマイナスになった場合、年金制度のみならず日本の経済・社会システムに幅広く悪影響が生じることも想定しています。
そこで、政府は、団塊ジュニアの世代が65歳に突入する2040年代の日本の将来を考えた場合、経済発展と高齢化などに伴う社会コストの抑制、持続可能な産業化の推進など、社会的解決の課題を両立するには、サイバー空間とフィジカル空間を融合させた新たな社会、Society5.0の実現や全世代型社会保障への改革を目指しています。そうした大きな課題や方向性は、当然地方自治体に大きな影響を与えます。国が掲げる理想的な社会を実現するためには、今後の政策的な課題をどのように捉え解決していくのか、地方自治体の不断の努力が必要になってきます。
そこで、まず初めに、次期長期計画の策定に当たって、次世代の江東区のまちづくりを構築していくための新たな視点は何か、また、重要課題をどのように捉えているか、見解をお伺いします。
また、政府は、デジタル化を原動力としたSociety5.0の実現によって、AIやIoTなど、第4次産業革命の先端技術を社会実装し、より高度な経済、より便利で豊かな生活を体現できると提言していますが、本区はSociety5.0の実現を次期長期計画の中でどのように捉えて取り組もうとしているのか、見解をお伺いします。
次に、新行財政改革計画についてお伺いします。
次期長期計画の中では、新たな行財政改革計画に基づき、業務委託や指定管理者制度、PPP・PFI的手法を積極的に活用し、財政負担の軽減と区民サービスの向上を図り、さらに、定員適正化計画に基づき職員定数の適正化を図りつつ、機動的な組織体制を整備しますと書かれておりますが、現状の問題点として、民間委託の案件がふえる中で、委託先の候補者不足、人材不足による質の問題、また、区職員のノウハウの蓄積不足による適正な指導、管理の体制が構築できない懸念があります。
一方、定員適正化計画による退職不補充の方針を維持するとすれば、児童相談所の設置による職員の増員など、行政需要の増大にどのように対処していくのか懸念されるところでございます。そこで、今回の新行財政改革計画では、これまでの行財政改革計画の何を踏襲し、新たにどのような視点と方針を持って考えられているか、見解をお伺いします。
次に、来年度予算編成のポイントについてお伺いします。
令和2年度当初予算の編成方針では、1、新長期計画を実現する施策の展開、2、積極的な見直しを踏まえた事業の再構築、3、持続可能で強固な財政基盤の構築とうたっています。重要なことは、東京2020大会の成功や、その先のレガシーを次世代にどのように継承していくかという課題と同時に、次の10年間の目指すべき姿のために、ハード・ソフトを含めてどのような種を植えていくかということであります。その意味で、来年度は次期長期計画の最初の年に当たるわけですが、どのような新たな視点を持って予算編成方針を考えられたのか、改めてそのポイントと財政計画の考え方について見解をお伺いします。
次に、人生100年時代の福祉的課題についてお伺いします。
政府の人生100年時代構想会議「人づくり革命 基本構想」の最終報告書には、高齢者から若者まで全ての国民に活躍の場所があり、元気に活躍し続けられる社会、安心して暮らすことのできる社会を目指す考え方が示され、各論にわたる政策パッケージとして、幼児教育の無償化、リカレント教育、高齢者雇用の促進などが掲げられています。いわゆる高齢者世帯を主たる給付から、切れ目のない全世帯を対象とした給付へと転換するとともに、年齢によらず全世代がその能力に応じて支え合う全世代型社会保障を目標にした政策プログラムを改めて提示したものです。
しかし、その目標を達成するためには、高齢者の健康寿命を確実に延ばしていく政策が必要になります。千葉大学予防医学センターでは、従来の一次予防の健康増進、二次予防の早期発見・早期治療、三次予防の再発・悪化防止という考え方に加えて、その個人が生活している社会環境を改善するゼロ次予防が重要であると述べています。従来の健康保険部門の枠を超え、都市計画や教育、地域福祉、防犯や防災のコミュニティづくりなど、縦割りでない横の連携が必要であると言われています。
例えば福岡市では、2017年7月に「福岡100 人生100年時代の健寿社会モデルをつくる100のアクション」を発表して、産官学民の連携による徹底した健康都市戦略を考え、例えば全145小学校区に公民館や社会福祉協議会を設置するなど、全ての市民がケアに参加するまちづくりを目指しているところは注目に値します。そこで、本区の健康寿命を延ばす戦略としてどのような展開を考えているのか、お伺いします。
また、全世代型社会保障への改革の中で、70歳までの就業機会の確保がうたわれています。健康寿命を延ばすためにも、働く意欲がある高齢者がその能力を十分に発揮し、働く人の個々の事情に応じて活躍できるように、自治体を中心とした就労促進の取り組みと地域の企業との連携の推進、また、シルバー人材センターの機能強化など、高齢者が生きがいを持って働ける環境の整備が必要になります。
厚生労働省は、生涯現役促進地域連携事業の中で、自治体を基本とした各関係団体と協議会をつくって、地域高年齢者就業機会確保計画を策定することを後押ししています。既に令和元年5月時点で23の道府県と35の市町村が実施しており、豊中市では高齢者の多種多様な活動ニーズに応える相談窓口の設置などを行っています。そこで、本区として、高齢者の就業機会の確保について今後どのような戦略で推進していこうと考えているか、見解をお伺いします。
次に、認知症対策についてお伺いします。
健康寿命を伸ばすことができたとしても、高齢者の認知症の発症数は年々多くなっていきます。筑波大学の研究では、2025年の認知症有病者数は約700万人と推計され、65歳以上の高齢者の約5人に1人が認知症であることを意味します。
そこで、本年6月18日に発表された認知症施策推進大綱の基本的な考え方では、認知症は誰もがなり得ることから、認知症の人やその家族が地域のよい環境で自分らしく暮らし続けるためには、認知症への社会の理解を深め、地域共生社会を目指す中で、認知症があってもなくても同じ社会の一員として地域をともにつくっていくことが必要であるとうたっています。そこで大事なことは、認知症に関する正しい理解です。私も既に他界した認知症の義父と初めて一緒の暮らしをしたときに、戸惑いは想像を絶するものがありました。しかし、認知症になっても希望を持って前を向いて暮らすことができる社会を築くことができれば、健康寿命を伸ばすことにもなります。
そこで、本区は、認知症対策の今後の課題と対策についてどのように考えているか、お伺いします。
さらに、厚生労働省の審議会では、健康寿命延伸プランの中に、通いの場のさらなる拡充を掲げています。高齢者の居場所と出番づくりは、認知症の発症予防にも大きく貢献しています。本区も既に通いの場として利用している福祉会館やふれあいセンター、グランチャ東雲などの既存のハードの社会資源のほかに、次期長期計画の中で地域共生社会を目指していくための新たなハード・ソフトの社会資源の構築をうたっています。そこで、今後の本区の新たな社会資源の構築をどのような戦略で考えているのか、高齢者施設の適正配置や今後の運営のあり方も含めて見解をお伺いします。
また、その中で、城東地区にも区内でも多世代交流施設として好評のグランチャ東雲のような施設を建設すべきと考えますが、見解をお伺いします。
次に、大綱の3点目、教育政策の諸課題と今後の展開についてお伺いします。
初めに、社会教育の展開についてお伺いします。
平成30年12月に中央教育審議会から出された、人口減少時代の新しい地域づくりに向けた社会教育の振興方策についての答申では、地域における社会教育の意義や果たすべき役割について議論した結果、社会教育を基盤とした人づくり・つながりづくり・地域づくりが一層重要であることが述べられ、その上で、新たな時代の社会教育の展開に当たっては、1、学びの場への多くの地域住民の主体的な参画を得ること、2、学習者のニーズやさまざまな課題に対応するため、社会教育行政担当部局と首長部局、学校、NPO、企業等の多様な主体との一層の連携、協働を図ること、3、さまざまな取り組みを企画、実施するため、専門性のある人材の活躍を促進することが重要であると指摘されました。
社会教育は住民の地域に対する愛着と誇りを育み、地域の担い手である住民を育てるとともに、地域コミュニティの持続的発展の礎となる重要な役割を持っていると言われています。そこで、本区も、社会教育の執行体制を、教育委員会の庶務課から本年4月に新たに設置された地域教育課に移管したことは英断だと思われますが、そこでまず、次期長期計画の策定に当たり、今後、本区はどのような社会教育推進のための戦略を考えているのか、見解をお伺いします。
また、本区は、これまで取り組んできた地域や保護者が学校のニーズに応じて支援してきた学校支援地域本部を、地域全体でこどもたちの成長を支えるとともに、地域住民の生涯学習、自己実現に資する家庭教育支援や地域課題解決に向けた取り組みを行い、学校を核とした地域づくりのための地域学校協働本部を構築していく方針を決めていますが、どの程度の期間でどのような体制で推進していこうと考えているのか、また一方で、学校運営協議会をつくり、コミュニティ・スクールを導入することも決めていますが、地域学校協働本部とコミュニティ・スクールとの役割をどのように整理していくのか、見解をお伺いします。
次に、学校施設のあり方についてお伺いします。
東京都の令和元年の予算の中に、学校施設の新しい考え方が取り組まれていました。学校との連携による高齢者の社会参加促進事業として、公立の小中学校の敷地内に、高齢者とこどもが交流する地域交流拠点(コミュニティハウス)を建設して、高齢者が放課後活動や学習支援を手伝い、多世代の交流サロンとして、高齢者の生きがいづくりやこどもがいたわりの心を持てるような施設の建設を望んでいます。ことしはモデル校として1校、1億1,000万円の予算を組み、来年度からは区市町村に実施を促していくと言われています。
これからの学校施設は、地域の拠点として、福祉施設や社会教育施設と複合の施設を検討すべきです。そこで、本区の地域学校協働本部の立ち上げの流れの中で、学校施設のあり方も見直すときと考えますが、区教委の見解をお伺いします。
もう一つ、地域共生社会の時代の学校運営を考えるとき、重要なテーマが多文化共生社会の実現です。そこには外国人の生活習慣や言葉の問題が存在してきますが、教育現場としては、将来のよき日本の理解者をふやすためにも万全な日本語教育の体制を整備して、こどもたちが安心して学習できる教育環境を整備することが重要です。そこで、今後の日本語教育指導の課題と支援体制の強化をどのように考えているか、見解をお伺いします。
次に、大綱4点目、地域振興と中小企業・小規模事業者支援策についてお伺いします。
まず初めに、多文化共生社会の実現についてです。
平成31年4月、深刻な人手不足の解消のために入管法等が改正され、新たな在留資格「特定技能」が創設され、今後、在留する外国人は増加の一途をたどると言われています。そこで、政府は、平成30年12月に外国人材の受け入れ・共生のための総合的対応策を策定し、外国人が教育、就労、生活の場でコミュニケーションできる環境を整備するための、現時点で可能な種々の政策を打ち出しています。
当然本区としても、在留外国人の増加を見据え、外国人を適正に受け入れ、日本人と外国人が安心して安全に暮らせる多文化共生の社会を実現することが、東京2020大会を迎えるに当たって、国際社会に開かれた地域振興のためにも重要な施策になります。そこで、本区の在住外国人の実態と多文化共生社会の実現に向けての取り組みについて、次期長期計画の中でどのような戦略を考えているか、見解をお伺いします。
次に、江東区国際交流協会の立ち上げについてお伺いします。
本区は、国際交流事業として、外国人向けボランティア活動をする団体が中心となって組織する、江東区国際友好連絡会と連携した国際交流イベントを実施していますが、在住外国人が、教育、保健、就労、子育てなど、さまざまな生活相談を一元的に相談できる窓口がありません。また、東京2020大会で本区に来訪された訪日外国人が気楽に相談できる窓口もありません。現在、一元的な相談窓口として国際交流協会を立ち上げ、言語や文化、法制度など、あらゆる面で支援している区が、23区中10区存在していますが、先ごろ訪問した2018年に設立した国際都市おおた協会では、2009年から多文化共生推進センターを立ち上げ、多言語に対応した在住外国人の一元的な相談窓口を設置しています。それを今回発展的に機能強化した組織が、国際都市おおた協会です。本区も、多文化共生社会の実現のためにも、一刻も早く江東区国際交流協会を立ち上げるべきと考えますが、見解をお伺いします。
さらに、自立した地方自治を支える地域振興のために重要なことは、NPOや各種ボランティア団体、社会教育団体など、知見や経験を有するさまざまな市民活動団体との連携です。既に本区では協働事業提案制度で、子育てや障害者福祉、また環境教育や日本語教育などの分野で実績を残していますが、数多くある市民活動団体が、日ごろからコミュニケーションをとり、地域共生社会実現のための人材育成や社会資源を見つけるためのコーディネートし合える体制を整備することが急務と言えます。
そこで、本区の行財政改革計画の中でも予定されている市民活動推進センターの整備は現在どうなっているのか、その進捗状況と今後の展開についてお伺いします。
最後に、中小企業支援のプラットフォームの整備についてお伺いします。
地域振興政策の核となるのは、やはり区内の各地域で核となっている中小企業、小規模事業者の皆さんです。商店街を含む地域のものづくり、商業、サービス業等の中小企業が、生産性を高め付加価値を増加させ、安定した経営ができる環境を整備することは行政の重要な役割であります。そこで、まず本区として、消費税が上がる10月1日を目前に控え、キャッシュレス社会の実現に向けた取り組みや経営支援策として、どのような施策に取り組んできたかをお伺いします。
さらに、中小企業、小規模事業者の経営課題は、事業継承や販路開拓、人材不足などさまざまな課題がありますが、一番困ることは、銀行や税理士のほかに、身近に気楽に経営相談ができる相手が少ないことであります。実践的な経営情報を入手しにくいことなど、さまざまな課題がありますが、本区においては、融資のための経営相談を経済課の窓口で中小企業診断士が行っています。しかし、少人数で経営している経営者が、みずから事業計画を立てて、行政や銀行の窓口に出かけるのはなかなか難しいとも言われています。そこで、行政と金融機関と地域の企業経営者が連携したワンストップで中小企業サービスができる本区独自の中小企業支援プラットフォームを構築し、データに基づくより効果的な中小企業支援体制を早急に整備すべきと考えますが、本区の見解をお伺いします。
今回の質問は、まちづくり、福祉、教育政策において、次世代の地方自治を活性化するためにはどのようにして地域再生を達成できるかという共通のテーマのもとに質問をさせていただきましたが、区長並びに関係理事者の明快な答弁を期待して質問を終わります。
御清聴ありがとうございました。(拍手)
(山崎孝明区長登壇)